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生殖専門医対策【男性不妊症診療ガイドラインより】

 男性不妊ガイドラインは、13のCQ(クリニカルクエスチョン:エビデンスの比較的多い内容)、7つのBQ(バックグラウンドクエスチョン:知識、情報として共有しておくべき内容(総説))、5つのFQ(フューチャークエスチョン:現時点では標準的とまでは言い難いものの近い将来の課題と想定されるもの)から成っています。

 ここでは、専門医試験に出題が予想される13のCQについてピックアップしてみようと思います。誤り選択肢として使われる可能性もあるため、推奨グレードCも掲載しています。

 ガイドライン解説本文の中から、要点を穴埋め形式にしました。

 

CQ1 男性不妊症の診断に陰嚢超音波検査(カラードプラ超音波検査を含む)は推奨されるか?

A1 身体診察と併用することで、精索静脈瘤の診断に陰嚢超音波検査(カラードプラ超音波検査含む)は推奨される。(推奨グレードA、エビデンスレベルII)

A2 男性不妊症患者(特に精液所見不良患者)における精巣体積測定、精路通過障害や陰嚢内容の他疾患の有無のスクリーニングに陰嚢超音波検査(カラードプラ超音波検査を含む)は推奨される。(推奨グレードA、エビデンスレベルII)

男性不妊症の患者の(1)%で陰嚢内の異常がある。

精索静脈瘤は、男性不妊症の原因の(2)%を占める疾患である。

精路通過障害の特徴は、閉塞部位より(3)側の精路の拡張である。

精巣上体頭部の長径が(4)mm以上あれば精路の閉塞を示す可能性がある。

精巣微小石灰化は(5)と関連があると報告されている。

1 65.3

2 30

3 精巣

4 11

5 精液パラメーター

 

CQ2 男性不妊症の診断に内分泌学的検査は推奨されるか。

A1 NOAとOAの鑑別検査として推奨される。(推奨グレードA、エビデンスレベルII)

A2 MHHの診断目的に推奨される。(推奨グレードA、エビデンスレベルII)

 

MHH: male hypogonadotropic hypogonadism ; 男性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症

テストステロンは日内変動があり、(6)にピークがあるので検査は(6)に行うことが推奨される。

血清テストステロン/エストラジオール比が(7)未満の患者に対し、アロマターゼ阻害薬は精子濃度・運動率および正常形態率を増加させる可能性がある。

高プロラクチン血症はしばしば(8)および(9)の低下をきたす。

また、内分泌学的検査は無精子症の(10)の鑑別に有用である。

6 午前

7 10

8 性欲

9 勃起機能

10 非閉塞性か閉塞性か

 

CQ3 遺伝学的検査(染色体検査・Y染色体微小欠失検査)はどのような場合に推奨されるか。

A1 NOAに対するTESEの適応を判断する目的においてY染色体微小欠失検査は推奨される。(推奨グレードA、エビデンスレベルII)

A2 精子濃度500万/mL未満の高度乏精子症およびNOAの原因を明らかにする目的において染色体検査は推奨される。(推奨グレードA、エビデンスレベルII)

A3 検査施行時には遺伝カウンセリングを受けられる環境が整っていることが推奨される。(推奨グレードB、エビデンスレベルII)

 

NOA ; non obstructive azoospermia : 非閉塞性無精子症

男性不妊症患者の(11)%に染色体異常またはY染色体微小欠失が認められる。

そのなかで最多は(12)であり、ついで多いのが(13)であった。クラインフェルターの有病率は男性では(14)人に1人。ロバートソン転座は一般集団では(15)%、男性不妊症患者では(16)%で認められる。

Y染色体微小欠失はgr/gr欠失やb2/b3欠失といった(17)や(18)単位の部分欠失が存在し、これらは(19)である。

11 14.3

12 クラインフェルター症候群

13 Y染色体微小欠失

14 1000~500

15 0.1

16 3

17 パリンドローム

18 アンプリコン

19 臨床的意義は不明(gr/gr欠失は日本人の33%にみられ、不妊症でない人からも同様の頻度で検出されるため不妊症の原因とはいえない)

 

Y染色体はX-transpose, X-degenerate, ampliconicの3領域に分けられ、ampliconic領域がY染色体特異的であり、P1~P8のパリンドローム構造がある。

 

CQ4 男性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(MHH)の患者においてゴナドトロピン療法は推奨されるか。

A ゴナドトロピン療法より精子形成が促進され、生殖機能獲得が期待できるため推奨される。(推奨グレードA、エビデンスレベルII)

LHは精巣(20)細胞でのテストステロン産生を制御し、FSHは主に思春期における(21)と(22)に関与する。

20 ライディッヒ

21 精子形成の開始

22 精巣の発育

 

CQ5 テストステロン低値の男性不妊症患者に、クロミフェンクエン酸塩投与は推奨されるか。

A テストステロン値が低く、ゴナドトロピンが高値ではない乏精子症症例においては精子濃度および運動率の改善が期待できる。(推奨グレードB、エビデンスレベルII)

クロミフェンは、視床下部からのゴナドトロピン放出ホルモンの分泌を亢進させ、ライディッヒ細胞かあらの(23)およびセルトリ細胞の刺激による(24)を促進させうる。

クロミフェン投与により血清テストステロン上昇は大部分の症例において認められるものの、精液所見の改善については十分な根拠がなく、不妊症治療に際しては、女性側の治療のステップアップにて対応されることが多い。

23 テストステロン

24 精子形成

 

CQ6 特発性の男性不妊症患者において抗酸化剤投与は推奨されるか。

A 抗酸化剤投与は精液所見の改善および妊娠率の向上に寄与するとする報告はあるものの、十分な根拠はない。(推奨グレードC、エビデンスレベルII)

精漿中のROS (Reactive Oxygen Species ; 活性酸素種)濃度の上昇は、(25)および(26)に伴う精子運動率の低下をきたす。

精子運動率を改善させる例としては、(27)などがある。

25 精子DFIの増加

26 脂質過酸化

27 L-カルニチン、セレニウム、ビタミンEは単剤で。亜鉛とビタミンEの組み合わせ、亜鉛とビタミンCおよびEの組み合わせ

 

CQ7 精索静脈瘤に対する手術は推奨されるか?

A1 精索静脈瘤を触知し(grade2以上)、精液所見が不良な症例に対して手術を推奨する。(推奨グレードA、エビデンスレベルI)

A2 NOAに合併した精索静脈瘤に対して、手術によりSRRが上昇する有効なエビデンスが存在しないことを説明し個別に対応することを推奨する。(推奨グレードC、エビデンスレベルII)

 

※SRR ; sperm retrieval rate 精子回収率

精索静脈瘤は、(28)静脈に血液が逆流し精索内の蔓状静脈叢が怒張・うっ血をきたした状態である。解剖学的に(29)側に多いとされており、両側例は(30)%程度とされる。男性不妊症における精索静脈瘤が占める割合は(31)%であり明確な原因としては最多である。精索静脈瘤は健常者でも(32)%にみられる。

精索静脈瘤精子濃度や運動率の低下を引き起こす原因は明らかではないが、(33)、(34)、(35)などが考えられている。

一般に精巣静脈瘤は(36)で分類される。

精索静脈瘤治療は(37)(38)を改善する可能性が示唆され、特にgrade2以上の症例が治療による恩恵が大きい。

平成27年厚生労働省の調査によると(39)術が86.6%であった。

28 内精

29 左

30 10

31 30.7

32 15~20

33 血液のうっ滞にうよる精巣温度の上昇

34 静脈圧上昇に伴う精巣内の低酸素状態

35 精巣内酸化ストレスの上昇

36 DubinとAmelarのgrade分類

37 妊娠率

38 生児獲得率

39 低位結紮術

 

CQ8 閉塞性無精子症(OA)に対する精路再建術は推奨されるか。

A1 OAでは、外科的精路再建(vasovasostomyおよびvasoepididymostomy)が推奨される。(推奨グレードB、エビデンスレベルII)

A2 射精管閉塞によるOA症例に対しては、TUREDが第一選択として推奨される。(推奨グレードB、エビデンスレベルII)

 

※TURED ; transurethral resection of ejaculatory duts : 尿道的射精切除

一般に精管切断術後の精路再建は、術後成績が(40)傾向にある。術者の経験が術後成績に影響するとの報告もあり、年間(41)件程度以上の症例経験がある医師による手術が推奨される。

Vasovasostomyにおける吻合法は、治療成績の観点から(42)の吻合が望ましいとされている。

40 よい

41 10

42 顕微鏡下

 

CQ9 非閉塞性無精子症(NOA)に対する顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE)は推奨されるか。

A1 NOAでは、micro-TESEが推奨される。(推奨グレードA、エビデンスレベルII)

A2 micro-TESEに際しては、合併症に留意することが推奨される。(推奨グレードB、エビデンスレベルII)

NOAの原因としては(43)などがある。

日本人を対象としたNOAの報告では、SCO、MA、低精子形成のうち(44)が71%と圧倒的に多い。したがって、精子を認める精細管が少ないため本邦ではNOAに対してmicro-TESEが必要な状況である。

TESEでの合併症には、(45)、(46)、(47)、(48)などの報告がある。また、(49)のリスクもある。

NOAでの治療成績を予測する因子として確定的なのは(50)である。

2022年4月からTESEは保険診療となった。TESEは単純なもの、顕微鏡を用いたもの、の2通りに分けられているが、精巣上体精子採取術を施行した場合は(51)で算定する。

 

43 染色体異常(性染色体、転座)やY染色体の微小欠失を含む遺伝学的異常、停留精巣、精巣捻転、放射線曝露、精巣毒性物質への曝露(化学療法)

44 SCO(Sertoli cell only syndrome)

45 血種

46 血流障害

47 炎症

48 テストステロン減少

49 性腺機能低下症の臨床症状発現

50 AZFaおよびAZFb欠失

51 単純なもの

 

CQ10 生殖機能が損なわれる可能性のある治療(主としてがん治療)を行う予定の若年男性患者において、治療前の精子保存に関する説明は推奨されるか?

A 造精機能障害をもたらす可能性があるがん治療前の若年男性患者においては、精子凍結保存に関する説明が推奨される。(推奨グレードA、エビデンスレベルII)

がん治療が生殖機能へ与える影響として、2018年のASCOガイドラインでは中間および高リスクにあたる化学療法や放射線療法は治療後に無精子症が遷延、永続することが記載されている。高リスクは(52)、放射線治療(精巣:成人男性 2.5Gy、小児 15Gy、頭蓋:40Gy、TBI)、中間リスクとしては(53)や精巣への放射線照射(1~6Gy)が不妊症になるリスクのある治療である。

52 アルキル化薬(シクロフォスファミドなど)

53 重金属(シスプラチン、カルボプラチンなど)

 

CQ11 射出精液より十分な精子が得られない患者において、生殖機能温存治療のための精巣内精子採取術(TESE)は推奨されるか?

A 生殖機能温存治療予定の男性がん患者において精液所見が無精子症または高度乏精子症の場合、または何らかの理由で患者が射精できず十分な精子を得られない場合、TESEは推奨される。(推奨グレードB、エビデンスレベルIII)

悪性腫瘍の患者では、(54)などが造精機能障害の原因となると考えられている。また、前立腺がんや後腹膜腫瘍では(55)の原因となる。

現在、生殖機能温存のための精子獲得目的のTESEは原則保険外診療にて施行されており、公的助成制度の対象である。

54 発熱、栄養障害、ストレス、内分泌系への影響

55 ED、射精障害

 

CQ12 PDE5阻害薬は勃起障害(ED)による男性不妊に推奨されるか?

A PDE5阻害薬は、EDによる男性不妊症に対して推奨される。(推奨グレードA、エビデンスレベルI)

日本で男性不妊症の保険診療として使用できるPDE5阻害薬は(56)である。いずれも同等の有用性があるとされている。

PDE5阻害薬の主な副作用は(57)であり、いずれも一過性で軽度である。しかし突然の(58)や(59)、(60)がみられた場合は、専門医への受診を勧める。

併用禁忌は(61)であり、使用することにより(62)を引き起こす。

56 シルデナフィルクエン酸塩、タダラフィル

57 頭痛、ほてり、紅潮、鼻閉、消化不良

58 視覚異常(非動脈炎性前部虚血性視神経症

59 突発性難聴

60 持続勃起症

61 硝酸薬

62 全身の血管が拡張して急激な血圧低下

 

CQ13 三環系抗うつ薬は逆行性射精を有する男性不妊症に推奨されるか?

A 三環系抗うつ薬は逆行性射精を有する男性不妊症に推奨される。(推奨グレードB、エビデンスレベルIII)

逆行性射精の原因としては(63)などがある。

オルガズムを感じた後の尿検体に(64)以上の精子が認められる場合に診断される。

アモキサピン(第二世代三環系抗うつ薬保険診療可能であったが、供給停止となり、保険外ではあるが(65)が有効性が高い。

63 経尿道前立腺切除術、腹部骨盤内手術、脊髄損傷、α遮断薬や抗精神病薬などの薬剤、糖尿病、多発性硬化症などの神経疾患

64 10~15以上/強拡大視野

65 イミプラミン(第一世代三環系抗うつ薬